2011年06月28日

海洋食物網を漁業が低位の状態にする

とある人に読みなさいと言われたので頑張って読んでみた。・・・いえ、ちゃんと必要性を感じたから読んでみたサイエンス論文。ぐぅ。

Pauly, D., V. Christensen, et al. (1998). "Fishing down marine food webs." Science 279(5352): 860.

漁業下落(Fishing down)という言葉を作った論文(だと僕は思っている)。要は漁業が高次の魚を獲りすぎて、漁獲対象が平均栄養段階の低いプランクトン食の魚種に移っていっていますよね、というのを示した論文。しかし、Wormの論文でもあったように、これは漁獲対象種を使って出した結論である。漁獲組成が本当に海の中の組成を表しているのかは、推論でしかない。人間の影響があるのは事実だろうが、減少の全てがそうであるかどうかは、この論文からは読めなかったし、そうではないと考えた。かといって、それが高次の魚、ひいては海洋生態系を「守らなくて良い言い訳」にはならないと考える。

あ、4つ前のHilborn教授のクラゲ以外、という言葉はこのPaulyさんの論文には出てきませんでした。別の論文でそういうことを言っている論文があるらしいです。
ラベル:水産資源
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2011年06月27日

人間が利用する種での個体群多様性とポートフォリオ効果

自分が主導でこれから定期的に開催する予定のゼミの一発目の論文。頑張らねば。

Schindler, D. E. et al. Population diversity and the portfolio effect in an exploited species. Nature 465, 609-612 (2010).

今まで生態系を構成する「種の多さ」に注目して種の多様性が論じられることが主だったが、この論文では、種内における多様性も見過ごしてはならないと指摘している。サケの回帰量に年変動があることはよく知られているが、アラスカはブリストル湾に帰ってくるサケの回帰量のばらつきは比較的小さいのに対して、湾に繋がる9つの河川それぞれに回帰していくサケの量の年変動は大きい。資産(資源量)が一定なのに、その分配の仕方(それぞれの河川への回帰量)が異なると言う点で、経済学におけるポートフォリオに似ている。そして、その回帰量の時空間的な不均一性が、漁業に従事する人間も含めサケを餌とする捕食者などにも恩恵を与え、そこの地域の多様性を維持することに繋がっているという話。

しかしメソッドでどうやったのかの記述が不十分なため、資源解析に不慣れな人は読みこなすのが難しいかと思った。ここでの変動係数(CV)は、年ごとに算出するのではなく、場所ごと。だから時間方向のばらつきでCVを場所ごとに計算して、、それを使って空間的なCVの差異を見比べてポートフォリオを見出している。サプリメンタリーにはないので、予想ですがたぶんあっているはず。 

非常に興味深い問題提起であった。単一種内でのばらつきが重要だとする論文は読んだことはないし、横国でよく生物多様性という言葉を聞くが、その中にも種内の多様性の話はあまり聞かない。ましてや、そのばらつきが実際に生態系の維持に関わっている、という例はまさしく本文中で述べている通り初めてであった。すごく、おもしろかったです。
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2011年06月23日

成功する漁業を推進させるのは、リーダーシップ、社会資本、および刺激策である

明日研究室のゼミで発表予定のNature論文。

Gutierrez, N. L., Hilborn, R. & Defeo, O. Leadership, social capital and incentives promote successful fisheries. Nature 470, 385-388, (2011).

従来漁業を成功させる(資源量が増える、CPUEが増えるなどの指標で判断)のは、今まで漁業者、管理者、科学者の協力による共同管理によってなされるとされてきた。この研究は、その定説を仮説と表現し、生態学的視点だけでなく社会経済学的な視点も包括的に見て検討している。共同管理の側面をいくつもの変数(リーダーシップを持った人間はいるか、複数種管理をしているか、国の発展具合は4段階のうちどの程度か等)に分解して、それを成功の指標を応答変数にとって、ANOVAやregression tree, RandomForestを用いて解析している。その結果、リーダーシップが一番影響の強い変数として選ばれた。なぜリーダーシップが大事なのかと言うと、そのようなリーダーが一人でもいると、漁具規制をするとき等に上との軋轢が減るそうである。国のトップが変わったときの漁民に与える影響にも頑健になるそうである。要はリーダーシップがあることで他への波及効果が見込める、つまり題名の通りpromoteする、ということらしい。ではリーダーが何をpromoteしたときに最も成功しやすいのか、というのは書いていなかったが、Fig3b)を見る限り、次に影響があるのがIndividual or community Quotaなので、それをpromoteすればより上手くいくのだろうか、と考えた。
ラベル:水産資源
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2011年06月17日

The State of World Fisheries - Ray Hilborn (世界の漁業の状況)

そういえばRay Hilborn教授ってどんな顔してるんだろう、と思ってググってみたらyoutubeで動画を発見しました。1から3まであるらしくて分かりやすい英語なので、興味ある人は是非。



2分45秒くらいのところで、生物学者は最大持続生産量(MSY)は量的には存在しないと示してきたが、経済学者にはそれが存在するとしてミスリーディングを引き起こしてきた、ってところが面白いです。聞き間違えじゃなければ(汗 この記事書いた2時間後にもう1回聞いて修正しました。まだ間違ってる可能性あります)。5分くらいのところで、恥ずかしながらまだ僕は読んでないのですがPoulyさんのFishing downの論文の説明で、「海洋生態系から何もなくなるだろう、あークラゲ以外」、と言うのはギャグなのか本文にも書いてあるのか後でちゃんと読んでみようと思いました。




ラベル:水産資源
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2011年06月16日

動的計画法による最適漁獲方策の導出練習

昨日の線形計画法に続き次は動的計画法を勉強しました。
逆瀬川浩孝さんのプログラムを見ながら勉強しました。ありがとうございます。
この順番で学習するのが最適なのかは分かりません。以下有名な(?)ナップザック問題を水産風にアレンジしたものです。・・・といっても別に名称を変えただけです。練習練習。

###漁師が漁に行く場合を考える###
###漁獲物を保管する場所は一つしかなく、容量も決まっているとする###
###重い大きな魚ほど価値が高いとする###
###従って容量が決まっている時に、どれほどの割合で大きな魚とそうでない魚を漁獲すれば###
###最も効率が良いのかを解く###
###なお魚は4種が1尾づついるとし、重複して同じ種は漁獲出来ないものとする###

###漁獲物の重量を決める###
> w <- c(4,6,3,2)
>
> ###漁獲物の価値を決める###
> v <- c(13,18,12,8)
>
> ###計算結果を格納する行列を用意する###
> ###1行目と1列目は計算の便宜上使うだけ。最後は捨てる###
> M <- matrix(0, length(w)+1, sum(w)+1)
>
> ###漁獲物を入れるスペース###
> T <- sum(w)+1
>
> ###ある一つの漁獲物ごとにスペースに入るのか否かまず計算する###
> for (n in 1 : length(w)) {
+ for (t in 1 : (T-1)) {
+ if(w[n] > t) {
+
+ ###入らなければ一つ上の値を持ってくる###
+ ###2つめの漁獲物が入らない時は、既に入っている1つめの漁獲物の値が挿入される###
+ M[n+1, t+1] <- M[n, t+1]
+ } else {
+
+ ###もし入るなら1つ上の値と、2つ目の漁獲物の価値と2つ目が入ってなお残るスペースで入っている漁獲物###
+ ###の合計を比べて大きい方を採用###
+ ###こうすることで別に軽い順に入れていかなくてもあとで更新される仕組みとなっている###
+ M[n+1, t+1] <- max(M[n, t+1], v[n] + M[n, t-w[n]+1])
+ }
+ }
+
+ }
>
> ###余計な計算行列を削除して最終出力###
> ###行の名前に重さと価値を小数点で区切って両方載せてみる###
> M2 <- M[(2:nrow(M)), (2:ncol(M))]
> rownames(M2) <- v+0.1*w
> rownames(M) <- c(0, v+0.1*w)
> M
[,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7] [,8] [,9] [,10] [,11] [,12] [,13] [,14] [,15] [,16]
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
13.4 0 0 0 0 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13
18.6 0 0 0 0 13 13 18 18 18 18 31 31 31 31 31 31
12.3 0 0 0 12 13 13 18 25 25 30 31 31 31 43 43 43
8.2 0 0 8 12 13 20 21 25 26 33 33 38 39 43 43 51
> M2
[,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7] [,8] [,9] [,10] [,11] [,12] [,13] [,14] [,15]
13.4 0 0 0 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13
18.6 0 0 0 13 13 18 18 18 18 31 31 31 31 31 31
12.3 0 0 12 13 13 18 25 25 30 31 31 31 43 43 43
8.2 0 8 12 13 20 21 25 26 33 33 38 39 43 43 51

上記Mがどういうメカニズムで埋められたのか日本語に起こしてみる。ここでの注意は、計算上作った1行目と1列目のせいで、例えばn=2であるとしたとき、重さ-価値関数(w[2], v[2])はちゃんと2番目の漁獲物の重さと価値を引いてくるが、計算結果を入れる行列Mの中ではM[2, ]としたときは漁獲物1を意味しているということである。以下順番に追ってみる。
例えばMの7列目(t=6)を見ると、
    [,7]
0 0
13.4 13
18.6 18
12.3 18
8.2 21

となっている。まずn=1のときに、最初に重さ4、価値13の魚が2行目に入った。次にn=2のとき、つまり3行目に重さ6の魚が入る際、1つ上の重さ4の魚の価値と、(入るならば)1つ上の重さ4の魚と新しく重さ6の魚を足し合わせた価値を比べる。つまり、今容量が6(t=6)あるわけだから6-4+1(0列目分)=3(t=2のときの状態)が余っている容量であるので3列目に戻る。
    [,6-4+1]
0 0
13.4 0
18.6 0
12.3 0
8.2 8

ここでは、2行目(n=2)に値が入っていない。容量が6-4=2のときには、重さ4の魚は入れないからである(プログラム中では+1されて一つ横の列に挿入される)。従って、重さ6の魚と重さ4の魚は、容量が6しかないときには同時には入れることが出来ない、と判定される。だからM2の7列目の3行目(M[2+1,6+1])には(つまりn=2, t=6)、1つ上の値(M[2,6+1]、つまりn=2,t=6)13と、18(v[2])+0(M[2,6-4+1])=18という数字を比べて、大きい18という数字が挿入される。どちらか1つしか入らないのであれば、重さ4の魚と重さ6の魚を比べて価値の大きい方を取った、というわけである。n=3のとき、つまり4行目に値を入れる場合も同様。容量6-3+1=4列目は、
     [,6-3+1]
0 0
13.4 0
18.6 0
12.3 12
8.2 12

なのでM[3+1, 6+1]には、前の状態までで最適であったM[3, 6+1]=18と、12(v[3])+0(M[3,6-3+1])=12とを比べて、今回は更新されず18のままとなる(M[4,7])。最後に、n=4つまり5行目に値を入れる。容量6-2+1列目は、
     [,6-2+1]
0 0
13.4 13
18.6 13
12.3 13
8.2 13

なのでM[4+1, 6+1]には、前の状態までで最適であったM[4, 6+1]=18と、8(v[4])+13(M[4,6-2+1])=21を比べて、今度は21が採択されるのである。こうして、容量が6のときには、価値が8のものと13のものを組み合わせるのがベストだ、ということが分かりました。重さを引いていけば、どういう組み合わせで入ったのかは逆算できます。前の状態までで最適であったものを使うのがこの動的計画法のミソである。・・・と理解しました。

まだ自分一人で使えるレベルにないので、引き続き練習します。
ラベル:R 水産資源 数学
posted by しばきん at 17:16| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 数学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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